ロボットというと、腕の形をした装置を思い浮かべるかもしれません。けれど、ロボットの定義はもっと広いものです。経済産業省(ロボット政策研究会報告書、2006年)は、ロボットを「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。
つまり、次の3つがそろって一つの仕組みとして閉じていれば、それはロボットです。
- ・センサー=測る(濃度や位置を測るIoTセンサー・計測器など)
- ・知能・制御系=判断する(測った値から次の動きを決める電装・制御)
- ・駆動系=動かす(判断に従って動くポンプ・モーター・アームなど)
「測る・判断する・動かす」。この3つがつながって動けば、腕の形をしていなくても、ポンプや計測器のような既存の部品からでも、ロボットは構成できます。どの工程に、どんなロボットを組み立てるか——その見極めが、自動化の投資の良し悪しを決めます。
ロボットを、見極めの「ものさし」として借りる
ここからは、この3要素を定義ではなく、見極めの道具として使います。どんな工程も「測る・判断する・動かす」に分解できます。そのうえで、要素ごとに問いを立てる。これは機械に向くか、人が担うべきか。全部か、一部か。いまやるか、技術を待つか。
答えの組み合わせが、そのまま自動化のかたちになります。3要素すべてを機械にすれば全自動。一部を機械に、残りを人が担えば半自動。いまは測るところだけ機械にし、判断と動作は人に残して、技術が追いついた段階で順に機械へ移していけば、段階的な投資になります。人と機械で役割を分ける人機協調も、こうしたかたちの一つです。
つまりロボットの3要素は、「やるか・やらないか」の二択を、「どの要素を・どこまで・いつ、機械にするか」という設計の問いに変えます。とりうるかたちを漏れなく並べ、自社の現場と投資余力に最も合う一つを選ぶ。私たちが見極めるのは、これです。
| かたち | 測る | 判断する | 動かす | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 全自動 | 機械 | 機械 | 機械 | 3要素すべて機械 |
| 半自動 | 機械 | 人 | 機械 | 一部を人が担当 |
| 段階的投資 | 機械 | 人→機械 | 人→機械 | いま一部、将来へ拡大 |
半自動のうち、人と機械の役割分担を意図して設計したものを人機協調と呼びます。
ロボットとは、あなたの代わりに働き続ける資産である
ここまでを、投資の視点から言い換えます。投資家のナヴァル・ラヴィカントは、富とは「寝ている間も働き続ける資産」だと述べ、その典型として、モノを生み出し続けるロボットの工場や、夜のあいだも顧客に価値を届けるプログラムを挙げています。人が時間を切り売りして得る対価とは、性質が違う。働き手の時間と、生み出される成果とが、切り離されているからです。
「測る・判断する・動かす」が閉じて自律的に回るロボットは、まさにこれです。一度組み上げれば、人がつきっきりでなくても働き続ける。だから導入とは、作業を一つ自動化すること以上に、現場のなかに「人の時間から切り離されて働く資産」を一つ持つことを意味します。
ナヴァルは、富を生むのは「固有の知識」に「レバレッジ(てこ)」を掛けることだ、とも言います。労働や資本に続く現代のレバレッジとして彼が挙げるのが、複製にコストのかからないコードやメディアです。ロボットは、そのレバレッジが現場で手足を持った姿だと言えます。人機協調は、この構造そのもの——人は余人をもって代えがたい判断(固有の知識)を担い、複製と反復のきく実行をロボットに委ねる。技術が進むほど、委ねられる範囲は広がります。
だから「どの工程に、どんなロボットを組むか」という見極めは、作業を自動化する判断であると同時に、どんな資産を現場に積むかという投資の判断でもあります。私たちが見極めるのは、その両方です。
手を止めれば、止まる。
働き続ける。
この考え方を実際の現場に当てはめた例として、液体の投入工程を人と機械で分担した事例があります。また、誰がどこまでを担うかの線引きは 責任分界点 で扱います。