CASE

新規ロボット導入の「見送り」と、既存設備を活かした半自動化

縮小・スコープ変更製造2026.06.01
測定可能な結果 過剰投資回避
3,000万円100万円
約1/30(約97%圧縮)
プロジェクト・プロファイル
業種・規模
北海道の樹脂・ゴム製品製造業(小規模)
現場のタイプ
個別受注・バッチ生産
抱えていた課題
高額な自動化計画と、手作業による品質のばらつき・労働負荷

1. 何が起きていたか

2つの工程に課題がありました。

切削工程では、特殊な樹脂を数品種だけ加工していました。当初のご要望は、6軸産業用ロボット(CNC制御=コンピュータで動かす加工)でまとめて自動化することでした。見積もりは3,000万円規模です。ただ、加工する品種は数えるほどで、これ以上増やす計画もありませんでした。3,000万円の機械を入れても、その費用を回収できるだけの仕事量がなかったのです。

撹拌工程では、粘り気の強いウレタン素材(粘度約9,000mPa·s=水あめくらいの固さ)を手で混ぜていました。中腰の姿勢が続いて作業者の負担が大きく、容器の隅に混ぜ残りが出て、品質もばらついていました。

現場がつらいので全部ロボットにしたい、という気持ちは自然です。ただ、仕事量に対して3,000万円の投資は重すぎました。

2. 何をしたか

切削工程は、ロボットを買わないことにしました。そのうえで、機械を持たずに同じ加工ができる方法を組み立てました。

やったことは2つです。1つは、同じ加工機(CNC)を持っている他社の、空いている稼働枠を借りる取り決めをまとめたこと。自社で買う代わりに、人の設備の空き時間を使わせてもらう形です。もう1つは、公的な工業試験場の技術支援を受けて、この樹脂(FRP=繊維強化プラスチック)を削るのに必要な治具(加工する物を固定・案内する器具)の作り方だけを、自社のものとして残したこと。機械は持たず、やり方だけ持つ、という組み方です。

撹拌工程は、容器ごと回して混ぜる既製のミキサーを使い、容器の中をこそぐ固定の羽根と、回転数を細かく変えられる仕組み(インバーター制御)を組み合わせました。これで、粘り気の強い素材で起きがちな気泡の巻き込みと混ぜ残りをなくしました。

買うかどうかの判断は、1つの数字で決めました。年間にどれだけ加工するか(仕事量)に対して、機械の費用が何年で回収できるか。この割が合わないなら、どれだけ高性能な機械でも入れない、と決めていました。

3. 何が変わったか

投資額は、3,000万円から100万円(切削工程の立ち上げコスト50万円+ミキサー50万円)になりました。およそ30分の1です。

切削工程は、機械を1台も買わずに、他社の設備を借りて加工を続けています。撹拌工程は、手作業のばらつきがなくなり、作業者の負担が減り、品質も安定しました。

4. この事例が示すこと

機械を入れる判断で一番大事なのは、「入れない」という選択肢を最初から持っておくことです。

自社で買うべき機械か、他社から借りればいい機械かを分ける目安は、仕事量と、費用を回収できる年数の割り合いです。この割が合わなければ、機械がどんなに高性能でも、その投資は元が取れません。性能の高さではなく、その現場の仕事量に見合うかどうか。そこを先に見ることが、結果として現場の負担を軽くする近道になります。

判断の分岐:買うか、借りるか

切削工程をどうするか
年間ロット数 × 償却年数の比率で決める
ロット数が多い(償却に見合う)
自社で買う
設備を保有する
ロット数が少ない(償却に見合わない)
この事例の選択
他社の遊休枠を借りる
設備は持たず、治具のノウハウだけ残す
判断軸は「年間ロット数 × 償却年数の比率」。性能でなく、その現場の仕事量に見合うかで決める。

この判断の考え方は 人手不足を機械で補うとき、何を選べばいいか で詳しく解説しています。

投資の内訳:3,000万円 → 100万円

当初(ベンダー想定・見送り)約3,000万円
6軸ロボット+CNC フルオートメーション
実際100万円
切削の立ち上げ 約50万円(CNC習熟・治具開発=大半が自社の工数。設備は他社の遊休枠、治具は自社の設備で製作=外部への機材投資は不要)/撹拌 約50万円(既製ミキサー+固定羽根+インバーター)
金額は新規に投じる現金。自社人員の習熟・設計の工数は別途。

よくあるご質問

Q.うちもロット数が少ないのですが、他社の設備を借りられますか?
A.ロット数が少ないほど、自社保有より借りる方が向きます。判断軸は「年間にどれだけ加工するか × 機械の費用を何年で回収できるか」。この比率が合わなければ、設備を持たず他社の遊休枠を使う方が、現金を抑えられます。借りられるかは、近隣の同業・同設備保有先の稼働状況次第なので、まずそこを当社が調べます。
Q.治具はどのように作るのですか?
A.治具は、自社の設備、外部の出力サービス、公的な工業試験場の設備など、状況に応じて選べます。形状次第で、内製なら数万円〜、外注精密加工なら数十万円〜が目安です。
Q.「他社の設備を借りる」座組は、どう作るのですか?
A.同じ加工機を持つ近隣企業の、空いている稼働枠を有償で使わせてもらう取り決めです。当社が、設備を持つ企業の洗い出し・条件交渉・公的機関の技術支援の手配までを代わりに進めます。発注側に立って座組を組むのが当社の役割です。
Q.自社の人がCNCを操作できるようになるまで、どれくらいかかりますか?
A.加工する品種が数種で形状が決まっていれば、研修と実習で数週間が目安です。公的な工業試験場の研修(5軸加工・デジタル技術等)を使えば受講料は実費級に抑えられます。最大のコストは受講料でなく、習熟にかける人の時間です。
Q.結局、いくらかかるのですか?
A.この事例では、新規に投じた現金は約100万円(切削の立ち上げ 約50万円+撹拌設備 約50万円)でした。当初のベンダー見積もり(数千万円)の約30分の1です。ただし金額は現金投資で、自社人員の習熟・設計の工数は別に必要です。貴社の場合の概算は、現場を見たうえで個別にお出しします。
Q.「機械を入れない」と言われて、貴社の売上にならないのでは?
A.一回の取引だけで見れば、そうかもしれません。ですが、私たちはそうは考えていません。 合わない機械でも無理に売れば、その場の売上にはなります。ですが、合わないものを買わされたお客さまは、二度と相談してくれません。逆に『今回は買わない方がいい』と正直にお伝えすれば、その場の売上はゼロでも、『この会社は本当のことを言う』と信じていただけます。 次に困ったとき、また相談してくださる。知り合いにも紹介してくださる。一回きりの売上よりも、ずっと相談していただける関係のほうが、私たちにとってもはるかに大きな価値です。 ですから、買わない方がよいときは、はっきりそう申し上げます。それが結局、私たちのためにもなるからです。相談は無料、費用は成果が出たときだけいただきます。

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実際のプロジェクトでは機密性の高い現場データを扱うため、Web上での公開は一部に限定しています。貴社の状況に近い事例があれば、個別にご紹介します。相談は無料、費用は成果が出たときだけ。営業電話はしません。

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