■ プロジェクト・プロファイル 業種・規模:北海道の技術・開発系企業 現場のタイプ:高速移動体の遠隔操縦(研究開発) 抱えていた課題:時速40kmでの遠隔操縦に耐える低遅延の実現と、誤った機材調達のリスク
1. 何が起きていたか
時速40kmで走る乗り物を、その場に乗っているような感覚で遠隔操縦したい、というご相談でした。当初のご要望は、手に入りやすい汎用のデジタル通信機器(2.4GHz帯)を使い、操作と映像のズレ(遅延)を30ミリ秒以下に抑えることでした。
時速40kmは秒速およそ11mです。遅延が大きいと、映像で危険に気づいてから車が止まるまでに大きく進んでしまいます。遅延は、そのまま安全に関わります。
2. 何をしたか
まず、遅延がどこで生まれるかを一つずつ分けて調べました。映像のズレは、撮影・圧縮・送信・復元・表示の各段階で積み上がります。汎用のWiFi方式は映像を圧縮して送り、受け側で戻すため、どうしても100ミリ秒を超えます。時速40kmなら、その間に1メートル以上、画面を見ないまま進む計算です。これでは要件を満たせないと判断し、汎用の2.4GHzデジタルでの実現は見送りました。
次に、すでに作られていた試作機を調べました。その試作機が遅延をほとんど感じさせないのは、映像を圧縮せずそのまま送る方式(WHDI)を使っているからだと分かりました。ただし、この方式の今買える製品は、生産終了か、数百万円規模の業務用機材か、ゼロからの開発しかありませんでした。
そこで、高い機材をすぐ買うことも、ゼロから開発することもせず、まず「その感覚」を最小の費用で確かめる進め方に切り替えました。具体的には、古物商の許可を使って中古市場から同じ方式の機材を集め、3Dプリンタで専用のケースを作って組み直す、という小さな試作(PoC=小さく試して可否を見ること)です。まず屋内で体験できる形から始め、少しずつ広げる計画にしました。
3. 何が変わったか
合わない仕様のまま数百万円を先に使う、という事態を防げました。試作を通じて「本当に必要な条件は何か、どこに技術の壁があるか」がはっきりし、大きな投資をしないまま、次に何へお金を使うべきかの見当がつきました。
さらに、この進め方が評価され、後から来たもっと大きな案件(約1億円規模の安全装置の開発)につながりました。小さく確実に確かめたことが、次の大きな仕事を呼んだ、というのが結果です。
4. この事例が示すこと
新しくて高機能な技術が、いつも一番いいとは限りません。
物理的な制約がある場面では、急いで高機能なものを入れると、かえって遠回りになることがあります。ときには古い方式の良さを見直し、ときには「今は買わない」と決めて、まず小さく確かめる。必要な条件を見極めてからお金を使う、という順番が、無駄な先行投資を防ぎ、次の機会につながることがあります。
もっと詳しい事例を知りたい方へ
実際のプロジェクトでは機密性の高い現場データを扱うため、Web上での公開は一部に限定しています。貴社の状況に近い事例があれば、個別にご紹介します。
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